Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters誌に論文が公開されました!(6月3日追記)
- 生物機能化学研究室
- 2021年5月13日
- 読了時間: 3分
更新日:2021年6月3日
論文が公開されました。M2の来馬君がファーストオーサー、M1の鈴木君がセカンドオーサー、瀬戸が責任著者の論文です。2018年に瀬戸が着任以降、初めてのオリジナル論文となります。研究室にとって記念すべき一報になりました。
内容は、トリプトファン及びその関連分子が根寄生植物ヤセウツボ(Orobanche minor)の発芽を制御するというものです。
根寄生植物の発芽は、通常、宿主の根から分泌されるストリゴラクトンによって誘導されます。この現象に基づいた、根寄生植物の防除法も考案されていますが、ストリゴラクトンの量的供給は容易でなく、実用化に至っていません。幾つかの植物ホルモンは微生物の代謝物としても作られるので、根寄生植物の発芽誘導分子を生産する微生物をスクリーニングすることを目的に研究を開始しました。
スクリーニングに先立ち、培地成分にヤセウツボの発芽に影響を与える成分が含まれていると問題なので、まず培地成分を色々と調査しました。その結果、微生物培地に広く用いられるトリプトンが、濃度依存的に、ヤセウツボの発芽を阻害するという現象を見つけました。そこで、トリプトンに含まれる阻害成分を探索したところ、単純なアミノ酸であるトリプトファンを単離・構造決定することが出来ました。トリプトファンによるヤセウツボの種子発芽阻害については、既に論文としての報告があり、そのことを知った時点ですこしがっかりしたのですが、もう少し色々と調べてみようということで、まずは、購入可能な類縁体を色々と入手して、その活性を調べました。結果的に、トリプトファンから代謝されて出来てくる植物ホルモンであるオーキシン(インドール-3-酢酸)も、ヤセウツボの発芽を阻害し、かつ発芽した幼根に対し伸長阻害作用を有することを見出しました。この結果をうけて、根寄生植物に対する発芽誘導分子であるストリゴラクトンの部分構造と、オーキシンを連結させたハイブリッド分子を合成し、その作用を調べたところ、ストリゴラクトンと同じように発芽を誘導するだけでなく、発芽後の幼根伸長を阻害する作用も併せ持つということを見出しました。発芽誘導+幼根伸長を併せ持った新しいタイプの発芽誘導分子になります。
また、トリプトファン誘導体の作用を調べている過程で、N-アセチルトリプトファンは、発芽を阻害する作用はもたないのですが、むしろ、単独で投与した際に、発芽を誘導する、という興味深い現象を見つけました。これまで知られている発芽誘導分子は、そのほとんどがストリゴラクトンの構造類縁体ですが、全く化学構造が類似しない分子が発芽を誘導するということで、面白い発見でした。ただ、N-アセチルトリプトファンそのものの作用は極めて微弱でした。そこで、構造展開により、高活性な分子を作ることが出来ないかと考え、トリプトファンに置換基を持たせた類縁体を幾つか合成したところ、活性が10~100倍程度上昇した分子の合成に成功しました。これでも、ストリゴラクトンと比べると、まだまだ活性は弱いので、今後さらなる構造展開が必要ですが、これまでにない新しいタイプの発芽誘導剤のリード化合物になり得ると考えています。
N-アセチルトリプトファンがどのようなメカニズムで発芽を誘導するのか?オーキシンとのハイブリッド分子を用いると、宿主存在下で処理をした際にも、寄生を抑えることができるのか?今後は、これらの問いに答えられるように、引き続き頑張りたいと思います。
ひとまず、ラボ発足以来、最初のオリジナル論文ということで、頑張って取り組んでくれた来馬君、鈴木君、おめでとうございます!
(文責;瀬戸)
6月3日に、大学HPより、本論文に関するプレスリリースを行いました。
https://www.meiji.ac.jp/koho/press/6t5h7p00003b8cwo.html
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